不動産訴訟の実務から見た改正民法(債権法・相続法)POINT50
■解説 不動産取引に関わる実務家必携!!◆不動産法研究の第一人者である著者が不動産訴訟に欠くことのできない 改正民法の重要事項を徹底解説!!◆計50の各テーマごとに「Q」,「A」,「解説」,「改正民法との関係」 と分けて,不動産に関わる改正民法(債権法・相続法)のポイントとなる 真髄にせまる!!はしがき 平成29年5月,民法の債権関係の分野において,同法制定 以来およそ120年ぶりに全般的な見直しがなされ「民法の一部を改正する法律」(平成29年法律第44号)が「民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(平成29年法律第45号)とともに制定公布され,ごく一部の例外を除き,令和2年(2020年)4月1日から施行されている。 他方,平成30年7月には,民法の相続法の分野において,昭和55年の配偶者の法定相続分の引き上げや寄与分制度の新設等の改正以来,約40年ぶりに,主として少子高齢化社会の進展と相続を取り巻く社会経済情勢の変化等の観点からの見直しが進められ,「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」(平成30年法律第72号)及び「法務局における遺言書の保管等に関する法律」(平成30年法律第73号)が成立し,いずれも順次施行され今日に至っている。 債権法及び相続法両分野における改正内容は多岐にわたるものであり,法曹関係者であってもそのすべてを正確に理解することは,かなり困難と思われ,ましてや,一般の国民がこれらの新たに創設された制度(例えば,配偶者居住権など)を正しく理解し,改正の内容に即した対応をとることは容易ではない。 幸い両分野における解説書等については,立法担当者,研究者,日本弁護士連合会等からわかりやすい多くの書籍が出版されており,詳細についてはこれらを参考とされるのがよい。 しかし,これらの改正に直接関連する専門職業家や実務家(例えば,弁護士その他法曹関係者,宅地建物取引業者等)にとって,それぞれの改正法分野についてその大要を把握することは必要なことであろう。 本書は,このような観点から,特に借地・借家や不動産訴訟の実務に携わる者の立場から,日常的に生ずる問題点で改正法に関連すると思われる具体的問題に即して改正法を顧みることにより,改正法の重要な内容を理解することを目的として編纂したものである。ここに提供された具体的事案は,その多くは最高裁判例に現れたもので,今回の法改正に直接,間接に影響があると思われる重要判例を題材としており,それ自体も紛争解決の指針とすることができるものであると同時に,改正の契機等も垣間見ることができるものである。本書を『不動産訴訟の実務から見た改正民法(債権法・相続法)POINT50』とした所以である。(本書の構成) 本書は,借地・借家及び不動産取引上比較的多く生ずる問題点について,改正法各条に対応する最高裁の主要判例を参考にして設問の項(Q)が作成され,回答(A)の項において主として,当該裁判例における第一審,控訴審,上告審の判断の内容,経緯等が把握できるよう各判例の主要説示部分を引用紹介することとした。解説の項においては,当該事案及びこれに関連する論点等について,解説するとともに,今後の検討課題等についても示唆できるよう試みた。また,改正法との関連の項においては,当該事案に関連する改正前及び改正後の条項を掲げ,改正前後の条項の確認を容易にできるよう工夫した。 本文中,特に指定のない条項は,改正後の民法のものであり,改正前民法については「改正前〇〇条」又は「改正前」,改正後民法については「改正法〇〇条」又は「改正法」と表した(なお,本文中で引用した判例及びその解説に一条」おける条文の表記は,判例上の表記によった)。また,本文中,改正法と二条」の関連で引用する条文は,改正前のものは破線,改正後のものについて三条」は実線で囲んだ。 なお,判例の出典中,民集登載分については他の判例雑誌を引用せず(裁判集民事登載分については以下による),それ以外の判例雑誌等に複数掲載されたものについては「判時」のみを,判時に登載のない場合は,当該掲載誌の1つを引用させて戴いた。 本書の刊行にあたり青林書院の宮根茂樹さんに多くのご助言,ご尽力を戴きました。ここに記して謝意を表します。 令和3年9月 澤野順彦著者紹介澤野順彦:弁護士(澤野法律不動産鑑定事務所)・不動産鑑定士 ■書籍内容 第1部 債権編[Ⅰ]――重要な基本的事項の改正1 公序良俗違反建築基準法等の法令の規定に適合しない建物の建築を目的とする請負契約(90条関係)2 意思無能力者の法律行為認知症に罹患した高齢者による不動産の売買契約の効力(3条の2関係)3 錯 誤土地・建物の性状に錯誤がある場合の売買契約の効力(95条関係)4 契約不適合責任借地権付建物の競売において借地権が存在しなかった場合ほかの法律関係(561条~570条関係)5 危険負担建物買取請求権が訴訟上予備的に行使されたが,未確定中における建物の滅失と危険負担(534~536条関係)6 原始的不能不動産の等価交換契約の内容の一部である建物の一部について,約定どおりの内容の建物を取得できなかった場合の法律関係(412条の2関係)第2部 債権編[Ⅱ]――契約履行上の主要論点の改正7 詐害行為取消権⑴いわゆる本旨弁済は,詐害行為取消しの対象となるか。(424条関係)8 詐害行為取消権⑵債務者が相当の対価を得て行った財産の処分行為は,詐害行為取消しの対象となるか。(424条の2関係)9 債権者代位権⑴⑴ 第三者が抵当不動産を不法占拠して競売手続が妨害された場合,抵当権者はどのように対処したらよいか。⑵ 土地の売主の共同相続人がその相続した代金債権を保全するため,買主に代位して他の共同相続人に対し所有権移転登記手続をすることができるか。⑶ 相続人に対し貸金債権を有する債権者は,その相続人の遺留分侵害額請求権を代位行使することができるか。(423条関係)10 債権者代位権⑵建物賃借人は,建物の不法占拠者に対し,建物所有者に代位して,直接自己に対して明渡しを請求することができるか。(423条,605条の4関係)11 受領遅滞建物の賃貸人が現実に提供された賃料の受領を拒絶した場合において,その後における賃料の不払を理由として賃貸借契約を解除することができるか。(413条関係)12 預金口座への振込預金口座に誤って振込がなされた場合,当該口座の名義人(受取人)は預金債権を取得するか。(477条関係)13 弁済供託債権者不確知を理由とする弁済供託がなされた場合において,供託の基礎となった債務の消滅時効が完成した場合,債務者はいつまで供託金の取戻請求をすることができるか。(494条~498条関係)14 手 付不動産の買主は,いつまで手付の倍返しをして契約を解除できるか。(557条関係)15 契約解除⑴いわゆる契約の附随的義務の不履行があった場合,相手方はその義務の不履行を理由として当該契約を解除することができるか。(541条関係)16 契約解除⑵同一当事者間で締結された2個以上の契約のうち,1つの契約の債務不履行を理由に他の契約を解除することができるか。(541条,542条関係)17 契約解除⑶⑴ 債務者が履行拒絶の意思を明確にした場合,契約を解除するには催告を要するか。⑵ 賃借人の賃料不払に基づき,賃貸借契約を解除する場合,常に催告が必要か。(541条,542条関係)18 契約解除⑷調停で合意された更新料の支払義務の不履行を理由として土地の賃貸借契約を解除することができるか。(541条関係)19 債務不履行に基づく損害賠償請求不動産の価格が売主の所有権移転義務の不能後も価格が騰貴を続けている場合の損害賠償額(415条,416条関係)20 連帯債権建物の転借人が賃貸人から民法613条1項に基づき賃料の支払を求められた場合,転借人は債権者不確知を理由として弁済供託することができるか。(432条~435条の2関係)21 不可分債権土地所有権に基づく建物収去土地明渡請求の確定判決の執行債務者が,同土地所有権の共同相続持分の一部を取得した場合,執行債権者は当該判決に基づき建物収去土地明渡しの強制執行をすることができるか。(429条関係)22 契約不成立の場合の損害賠償責任⑴ 下請業者が施工業者との間で下請契約を締結する前に仕事の準備作業を開始した場合において,施主が施工計画を中止した場合,下請業者は施主に対し,損害賠償を請求することができるか。⑵ 建物建築の段階で,完成後の建物の一部を賃借する予定で,媒介業者を介して賃貸借の交渉をし,具体的な準備行為をしていたが,建物完成後,建物所有者が他に賃貸してしまい,建物の賃借ができなかった場合,賃借希望者は建物所有者に対し,損害賠償を請求することができるか。(521条関係)23 建築請負契約と建物の重大な契約内容の不適合建築請負契約の目的物である建物に重大な契約の内容に不適合があるためこれを建て替えざるを得ない場合に,注文者は請負人に対し,建物の建替えに要する費用相当額の損害賠償を請求できるか。(541条,改正前635条関係)24 瑕疵修補に代わる損害賠償請求請負代金債権と目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権との相殺の可否(改正前634条,改正559条,634条関係)第3部 債権編[Ⅲ]――貸借に係る主要論点の改正25 準消費貸借土地建物の売買代金債務を目的とする準消費貸借契約が締結された場合,売主は,買主の準消費貸借契約上の債務不履行を理由として,買主の土地建物の所有権移転登記手続請求を拒むことができるか。(588条関係)26 使用貸借⑴――使用貸借の負担建物の貸借関係において,貸主所有の不動産に賦課された固定資産税を負担している場合,賃貸借であることを主張できるか。(593条関係)27 使用貸借⑵――遺産の使用継続共同相続人の1人が相続開始前から,遺産である被相続人所有の建物に同人と同居していた場合において,相続開始後も同建物を使用することができるか。(593条,597条関係)28 使用貸借⑶――解除,使用収益期間⑴ 返還時期を定めない土地の使用貸借において,使用収益をするのに足りる期間の経過前に,信頼関係が破綻する事情が存する場合,貸主は契約を解除することができるか。⑵ 木造建物の所有を目的とする使用貸借において,相当な期間を経過した場合に貸主は契約を解除することができるか。(597条,598条関係)29 使用貸借⑷――使用借権の経済的価値建物の賃借人の失火により同建物が全焼したため,その敷地の使用借権が喪失した場合,賃貸人は賃借人に使用借権喪失による損害賠償を請求できるか。なお,本件建物は,老朽化しているが,通常の利用方法で相応の維持修繕をすれば,本件火災後10年程度は存続したものと推定される。(593条関係)30 賃貸借⑴――賃貸借の法的性格⑴ 賃貸人の所有地と信じて契約した賃貸借において,後日,その土地が他人の所有と判明した場合,賃借人はどのような主張をすることができるか。⑵ 所有権ないし賃貸権限を有しない者から不動産を賃借した者が,その不動産について権利を有する者から明渡しを求められた場合,賃借人は賃貸人に対し,賃料の支払を拒絶することができるか。(601条関係)31 賃貸借⑵――建物と敷地賃借権の帰趨⑴ 借地契約が債務不履行により解除された場合,借地上建物の賃貸借は終了するか。⑵ 借地上の建物について,他人名義で所有権保存登記及び所有権移転登記がなされ,同建物に設定された抵当権の実行により同建物を競落取得した者は,当該建物の敷地賃借権を当然に取得するか。(601条関係)32 賃貸借⑶――建物の敷地利用権⑴ 同一所有者に属する土地及びその地上の建物のうち,建物のみが任意譲渡された場合の建物敷地の使用関係⑵ 遺言により持分各2分の1で共同相続した土地上に相続人の一方が所有する建物が存する場合において,他方の相続人から土地について分割請求がなされた場合における建物敷地使用関係(601条関係)33 賃貸借⑷――共有物の場合⑴ 共有建物を民法602条所定の期間を超えない賃貸借契約を締結する場合,共有者全員の同意を要するか。⑵ 区分所有関係が成立している建物の共用部分の賃貸借をする場合,総会の決議を要するか。(601条,602条関係)34 賃貸借⑸――対抗力⑴ 土地の所有権と賃借権とが混同した場合,賃借権は消滅するか。⑵ 賃貸中の土地を取得したが,所有権移転登記を経由しない間に行った土地賃借人に対する未払賃料の請求及びその債務不履行による契約解除の効力(605条関係)35 賃貸借⑹――不動産賃貸借の対抗力借地権の対抗力を備えない建物所有者が,当該土地に抵当権が設定された後,賃借権の時効取得に必要な期間,当該土地の占有を継続した場合における,当該土地の競売又は公売による買受人に対する賃借権の時効取得主張の可否(605条関係)36 賃貸人の地位の移転⑴ 賃貸建物の新旧所有者が賃貸人の地位を旧所有者に留保する旨の合意をした場合において,賃貸借終了後,賃借人は新所有者に対し,敷金返還請求権を有するか。⑵ 賃料債権が差し押さえられた後に建物が譲渡された場合,譲渡後に弁済期の到来する賃料に差押えの効力が及ぶか。(605条の2関係)37 敷金の承継賃貸中の土地・建物が譲渡・競売され,その所有権の移転に伴い,賃貸人又は賃借人の地位が新所有者に承継された場合,敷金に関する権利義務関係は,新賃貸人又は新賃借人に承継されるか。(622条の2関係)38 賃貸人の修繕義務等建物の賃貸人は,賃貸建物について,どの程度の損傷,腐朽について,修繕義務を負うか。また,賃借人は,賃借物の修繕が必要な場合に,自ら修繕をすることができるか。(606条,607条の2関係)39 賃借人による修繕不動産の賃貸借において,賃借物の修繕が必要である場合,賃貸人は修繕義務を負うか,また,賃借人は自ら修繕することができるか。40 賃借人の原状回復義務建物賃貸借において,通常の使用・収益により生じた損傷について,賃借人とする旨の特約は認められるか。(621条関係)41 連帯保証人の責任建物賃貸借契約が更新された後,賃借人が数ヵ月分の賃料を未払のまま自殺した場合,賃貸人は未払賃料及び遅延損害金並びに原状回復費用等の損害を賃借人の連帯保証人に対し請求することができるか。(465条の2関係)42 賃借人の債務不履行による賃貸借の解除と賃貸人の承諾のある転貸借の帰趨賃貸人の承諾のある転貸借がなされている場合において,賃貸借契約が解除された後であっても転借人の使用収益が継続している場合,転貸人は転借人に対し転貸料を請求できるか。(613条関係)43 借地権者による妨害排除請求借地上の建物が滅失した後,当該土地上に建物を所有し土地を占有する者に対し,借地権者は建物収去土地明渡しを請求できるか。(605条の4関係)第4部 相 続 編――高齢化,国民意識の変化等に伴う相続法主要論点の改正44 配偶者居住権被相続人と同居していた配偶者が,相続開始後遺産である建物に居住し続けることができるか。(1028条~1041条関係)45 遺産分割等相続財産である不動産について,その一部の持分を確定的に取得した相続人の1人が,残余の持分部分が遺産共有の状態にある場合において,その不動産の共有物分割請求をすることができるか。(903条4項関係)46 自筆証書遺言自筆証書遺言がなされた場合において,日付や氏名を欠いたり,誤記した場合などには,遺言は無効となるか。(968条関係)47 相続の効力「相続させる」趣旨の遺言による不動産の権利の取得について,登記なくして第三者に対抗できるか。(899条の2関係)48 遺留分侵害額請求権民法903条1項の定める相続人に対する贈与は,そのすべてが遺留分侵害額請求の対象となるか。(903条1項,1044条関係)49 相続と預貯金⑴ 被相続人の遺産である預貯金は遺産分割の対象となるか。⑵ 共同相続人の1人は,被相続人名義の預金口座の取引経過の開示を単独で請求することができるか。(909条の2関係)50 特別の寄与内縁の夫婦の一方の死亡により内縁関係が解消した場合,民法768条(財産分与)又は民法1050条(特別の寄与)の規定を類推適用して財産給付を求めることはできるか。(1050条関係)