1988年の創設以来、衣服の構造や価値の在り方を問い直し、現代ファッションへ大きな影響を与えてきたMaison Martin Margielaより、フォーマルウェアを静かに再構築したシャツの逸品をご紹介致します。 清潔感のあるホワイトを基調に、前身頃へ異なる織りの長方形パネルを重ね、ゆるやかな曲線を描く裾と大胆に幅を取ったカフスによって、クラシックなドレスシャツへわずかな違和感を忍ばせたこちらの逸品。 一見すると簡潔な白いシャツでありながら、胸元には周囲と異なる細かな畝を持つパネルが設けられており、伝統的なタキシードシャツの胸当てを思わせる構成を、装飾を抑えた長方形として表現しています。 中央のパネルは大きな切り替え線によって明確に区画されていますが、全体を同系色で統一することで主張を過度に強めず、光の受け方や生地の陰影によって初めて構造の違いが浮かび上がります。ロゴやグラフィックに頼らず、素材と縫製だけで個性を成立させている点に、メゾンらしい知的な付加価値がありますね。 袖口には通常のシャツよりも長く幅広いカフスが施されており、手元にシャープな重さを加えながら、腕を下ろした際のシルエットを縦に引き伸ばしています。過剰な装飾を加えず、既存の寸法を変化させることで印象を更新する手法は、日用品の構造を見直してきたMaison Martin Margielaの思想を感じられる部分ですね。 ネックタグで円に囲まれた14は、2005年春夏に始まったメンズのWardrobe for Menを示しており、流行に左右されにくい普遍的な衣服をメゾンの視点で再編集するラインとして展開されました。品質表示タグに旧称のMaison Martin MargielaとSTAFF INTERNATIONALの表記が残ることから、本品は2005年から2014年頃の製品と推定されます。 スタイリングとしては、ワイドスラックスへ合わせて胸元の切り替えを端正に見せるほか、ロングスカートや落ち感のあるパンツと組み合わせることで、カフスと裾の動きを生かしたジェンダーレスな装いをお楽しみいただけます。ジャケットやロングコートの内側へ重ねても中央パネルが静かなアクセントとなり、クラシカルな着こなしを保ちながら、Maison Martin Margielaならではのモードな視点を自然に加えられますね。 是非この機会に。